久々のブログ更新が妖怪絵札だけな上に、クソマニアックな妖怪でごめんなさい。
第三十回は、山地乳です。『ヤマチチ』と読みます。『ヤマチチチ』ではありません。
海外にはドラキュラとか色々と吸血鬼というのがわんさかおりますが、日本のこの妖怪山地乳は、人間の『息を吸う』、吸息鬼です。
息を吸われるってなに?って感じになるかもしれませんが、多分直接的に息って意味ではなくて、多分生命力みたいなものだと思います。
山地乳は名にある通り山に棲む妖怪で、東北に多いそうです。
夜になると人の寝ている所にこっそりと侵入し、口から直接息を吸うといいます。
ここで不思議なのは、その、山地乳に息を吸われてしまっているところを、誰か第三者が目撃していると『息を吸われた人間』は長寿になると言われ、誰にも気付かれずに吸われてしまった人間は、翌日に死んでしまうというのです。
「なんだよお前そんな顔して。俺の顔になんかついてるかい?」
「いやさあ。…昨夜見ちゃったんだよね。」
「なにを?」
「…お前夜に山地乳に息吸われてたよ。」
「え…?えぇええー?www マ ジ で wwww」
絶対反応に困る。夜寝てる間に化け物に口をチューチュー吸われていたなんてキモイし怖いけど、
そうかあ、じゃあ長生き出来るなあ…というのは。
逆に目撃されないと死ぬってのは、どうやって山地乳の仕業とするんでしょうね。
なんとなく山で昨日まで元気だった人がぽっくり逝くとそういう事になるんでしょうか。
目撃されると長生きってのも、一体何処に違いが出るんでしょうね。翌日に死ぬのと将来長寿になるのとじゃ真逆過ぎて目撃された山地乳さんに何が起こっているのかよく分からんです。
因みにこの山地乳ですが、これは野衾が化けたもの、というふうに言われています。野衾については、この妖怪絵札にて後に扱うので詳しい説明は後日。簡単に言うとムササビが色々と妖怪的特徴を付加されていったのが野衾です。
妖怪の系統にも色々あるというのは何度かこのシリーズで書いてますが、中には『当時正体のよく分からなかった普通の動物』も妖怪に分類されている事があり、
ムササビ、つまり野衾は典型的なそれで、当時はコウモリが化けて妖怪化したのがムササビと言う事になっていたのです。
つまりポケモン風に言えば、コウモリ→ムササビ→山地乳、という二段階進化ルートだった訳です。
オモチロイね。
『息を吸う』っていう特徴はあんまり聞いた事がないかもしれませんが、日本近辺の国には他にもそういう連中、吸息妖怪はいまして、有名で面白いものだと、中国の『一目五先生』というのがいます。
それは五匹一組の妖怪で、内一匹は一つ目、他四匹には目が一つもなく、一つ目の一匹に他四匹は視覚を頼って行動します。
一目五先生は、やはり寝ている人間を獲物とし、一匹ずつ寝ている人の鼻を嗅ぐといいます。一匹、二匹と鼻を嗅がれる毎にその人の息は弱まり、反対に妖怪の腹は膨れ、数が増えるほどその人は重い病を患うといいます。そして五匹目が嗅ぎ終わってしまうと、それは死に至るというのです。
一応段階を踏むとはいえ、気付かずに嗅がれ切ってしまうと、特に理由もなく殺される訳だから怖いですね。
一匹の一つ目に従う四匹のセットな感じも、面白いというか怖いというか。
脱線するので今回は詳しくは省きますが、疫病をはやらす神、疫病神も、昔は図像で表すとき必ず五人組で描かれるのが不思議です。しかも、どこで見ても同じデザインの特徴的なデザイン。
一匹は三本角、もしくは三脚のあるお椀をひっくり返したような頭の、猿のような体をしたもの。
一匹は盆を垂直に立てたものに目鼻口を付けて、上に生えた取ってのような二本のツノと、下からは同じように生えた手のある顔の、毛むくじゃら。
一匹は長い仙人のような頭で、9の目玉を持つ猿のようなもの。
一匹はまるで高位の僧の法衣の襟のように、後頭部部分に大きくせりだした皮膚?のある、やはり猿のようなもの。
一匹は着物を着た、天狗のように長い、しかし先の尖った鼻の、目が大きく、尖った歯がゾロリとし、耳の垂れた形容に困るおじさんのようなもの。
なんなのだろう。ルーツが前からずっと気になる妖怪の一つ。
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