ロールシャッハなポン子コン子とマンハッタンなひよこ
inaさんとakitoさんとWATCHMENという映画を観て来たよ。
日本での知名度は低いけど、なんでも原作はあっちじゃ超有名というか、名作と名高いグラフィックノベル(アメコミの中でも、大人向けのモノのことをこう呼ぶそうです)なんだとか。
何年も映像化不可能といわれ続け、企画が色んな配給元や監督の手をわたっては何年も実現できずにいた映画らしいです。
かなり難解な話なのかなーと勝手にイメージしていたのですが、観てみたらそんなに難しい話ではなかったです。言いたい事は解り易いと思います。
面白かったかどうかですけど、僕は面白かったです。感想を一まとめに言うなら、『原作読みたいな』です。
前評判で、バックリ意見が分かれる的な事は聞いていたんですが、確かにそうだろうなと思います。単に好き嫌いの部分ははっきりするだろうし、何より案外ヴァイオレンスシーンや残酷な描写があるので苦手な人はアウトかも。残念なことに僕は残酷描写に関してかなり麻痺してるんでその辺は全然大丈夫でした 笑。
この映画は元々inaさんに教えてもらった映画なんですが、観に行きたいなーってなる流れは
この覆面の奴カッコイイな → え?監督が300の人?大丈夫なんだろか。300観てないけど 笑。 → 『アメリカ史の歴史的大事件の陰には常にウォッチメンがいた…byトレーラー』 んー面白そうだナ!
でした。因みに観てみたら内容よりロールシャッハかっけええ!な訳だったけど 笑。
↓ 以下、内容に関する事書くので白文字で感想 ↓
なんかイメージしていたのはもっと歴史にウォッチメンが深く関わってくるのかと思っていたのですが、その辺はバックグラウンド程度の扱いでしたね。
ウォッチメンの世界だと、アメリカがベトナム戦争に勝っちゃってるし、ウォーターゲート事件がウォッチメンの活躍(?)でもみ消されててニクソンが大統領続けてるしね。
どっちかっていうと、ウォッチメンが実在した場合のもう一つのアメリカ史という感じでした。
Dr.マンハッタンという無茶苦茶な存在がいて、ヒーローみたいな人たちがいて。自己中心的な正義を掲げる人間的なヒーロー達が法律でヒーロー活動を禁止され、『ヒーローは必要ないよ』となってる中で、政治的問題に直面したときどうすれば自分の正義を貫けるのか。みたいな。違うかも 笑。
冒頭でコメディアンが殺され、犯人は誰か?という流れで始まるわけですが、本題は別にありますね。
犯人も割りと簡単に予想が立つし、コメディアンの殺された理由も別段特別な理由でもなく普通です。
暗殺事件をきっかけに再び動き出す面々が次第にそれぞれのバックグラウンドを現し始め、主にコメディアンをはじめとした、アメリカ的性格を皮肉って表す。侵略から始まったアメリカの掲げる暴力的な正義を皮肉ってるのも本題の一つですよね。
オジマンディアスの多くを救う為に多少の犠牲はやむをえないという発想もアメリカ的だよね。いや、アメリカ的っていうより、広島に原爆を落とした時と同じような発想だよね。
正義なんか存在しない。利己的な善悪の構図があるだけだっていうね。
言いたい事はよく分かります。その通りだと思うし。それがこの映画の言う『ジョーク』が含むところなんでしょうね。ラストのロールシャッハの「NYで喜劇役者が死んだ」の台詞で終わるのがカッコイイです。
なんだけど、確かに監督はなんとか上手くまとめているかもしれないとは思うんだけど、個人的には勿体無いと思いました。どーーーーしても、ダイジェスト感はあるんですよね 笑。
原作は全10刊だからしいです。それを3時間に収めるってのは至難だろうと思います。キャラクターも多いし、それぞれの設定をちゃんと描かなきゃいけないし。かといって三部作とかに分けてしまうとラストが残念になっちゃうし。
だから前半世界観の把握とキャラクターの把握に追われてなんだか分からないよーという人は多いのでは。この辺だったのかな。難解だって評判が立ってた理由は 笑。
よく分からなかった。という人は余裕と気力とお金があったら何回か観てみればいいんでないかな。そんなに難しい話ではないです。
でまあ、とにかくキャラのバックグラウンドを描くのに時間がかかっているので、本題に入るまでがすんごくながーーーい 笑。
いや、面白いのでそんなにダレたりしないんですけどね。シルクスペクターとナイトオウルのくだりはあんまり本題に関係ないし個人的に退屈だったけど。そんだったらロールシャッハのエピソードをもっと観たかった。
そういうことで、僕は観終わってから、原作が読みたいなあと思ったのでした。
長くなるけど登場人物について。
ロールシャッハはビジュアル的にも真っ先に気になったキャラでしたが、なかなかキャラが立ってて良かったです。登場シーンの台詞がまたカッコイイし、動きがいちいちいいですね。(オジマンディアスの背後に迫る時、飛び降りるときに足音立てないように途中柱につかまってワンクッションおいたりするとことかね。カッコイイ。)
僕はどうやら、ヘルボーイやロールシャッハみたいな探偵風のデザインが結構好きみたいです。これまた個人的なことだけど、ロールシャッハが微妙に一番背が低いのもいいなあ 笑。
反社会的な性格もいいですね。それでいて、一番人間的なキャラだと思います。
あと、オジマンディアスに何度も吹っ飛ばされても、毎回帽子を被りなおすのとか面白いですね 笑。
あとお友達のおうちのドアノブぶっ壊して勝手に缶詰の豆食ってたり。それでいて『迷惑だったか?』とか言う。オマエ勝手にドアノブぶっ壊して侵入して缶詰二缶も食っといてそれはねえよ 笑。
まあ怒れないナイトオウルの気持ちはよく分かる 笑。
とにかく一番キャラがたってて考えが一貫してたので大好きですロールシャッハ。
直接主題でもある考え方がロールシャッハvsオジマンディアスだったので、一方のオジマンがあんまりちゃんと描かれてない気がしたのが残念。自分で話してたからねコイツ。僕はこうなんだよ!って。
意外と個人的にどうでもいいなーと思ったのはシルクスペクターとDrマンハッタン。火星での会話はイマイチ納得のいくものではなかったです。僕はね。
「君の存在が奇跡だ。」いやいや、どう考えてもDrの方が奇跡です。
あとよく分からなかったといえば、マンハッタンがどの程度までオジマンにだまされていたのかがよく分かりませんでした。
にしてもオジマンの自己中な計画で勝手に世界の敵にされてしまったのに怒らないあたり、あとほとんどのカットで全裸だったあたり、Drマンハッタンの倫理観は確かに人間性を失っていた 笑。
ナイトオウルは所謂普通の人でしたね。むしろへたれっぽい 笑。
妥協しない信念の人ロールシャッハと共に行動してはいたものの、ナイトオウルはフツーの人。言い方変だし誤解を招くかもしれないけど、一般市民的人物。
ロールシャッハがマンハッタンに消されてしまい激情し、オジマンに向かっていったりは一時的にしてみるけれど、結局はなんか平和だし、美人の奥さんも出来そうで今は幸せです!なナイトオウルは本当によくある一般市民像だと思いました。
で、ラストでロールシャッハ記が新聞社に渡ってしまうわけですが、そのシーンでTシャツのスマイルマークにコメディアンのバッジみたくケチャップがつく演出は間違いなく、オジマンの作り上げた平和(?)が崩壊することの暗示ですよね。
その後のナイトオウルの心境がどうなるか。これは本当に皮肉たっぷりだと思います。この辺がWATCHMENが投げかけるものなんだと思います。
長々と書いたわけですけど、僕はWATCHMENは『面白くて楽しめた。けど、惜しいというか勿体無い!』というのが印象です。
含むものは多いけど、完成度がベストじゃない気がする。その辺で同じ系統をいくダークナイトに負けてるかなーと思います。
だから面白かったんだけど、(ハリウッド映画のくくりで)星5つ満点で採点するとしたら僕は星3つなんです。
もしこれがベストな形で出たとしたらもっともっと良かったと思います。で、そのベストが原作なのではないかなと、勝手に想像しているわけで。だから何度も書くけど原作を読んでみたいです。(この辺は原作に忠実に有ろうとするタイプの映画の多くが避けれないトコだよなー。)
因みに噂で聞いたのですが、WATCHMEN、テリー・ギリアム監督も一度映画化しようとしたことがあったらしいです。それは実現しなかったわけだけど。
それはそれで観てみたかった。全く別のWATCHMENが観れただろうね 笑。
※追記(内容に入った部分を含むのでまた反転白字)
アマゾンで漫画版ウォッチメンの第一章が試し読み出来たので読んだのですが、映画版では気付かなかったダブルイメージがやっとこさ分かりました。
コメディアンのバッジの血ですが、アレ、終末の時計の針なんですね。映画版では殆ど普通の血にしか見えなかったんですが、漫画版だと血の形が少し矢印っぽいんです。
コメディアンのあの事件に始まりでの、ラストの新聞記者のスマイルマークのケチャップ跡だったので、終末の時計のダブルイメージとは気付かなくても、自然と観る側にはこれからの破滅を問題なく充分暗示出来てましたけどね。
それに気付いたからなんですが、Drマンハッタンの額のマーク。アレは水素原子のマークだってのは観た時に分かって、多分水素爆弾とかけてるんだろうなと思ってたんですが、アレももしかしてマークの電子の点の位置は、終末の時計の0時の暗示でもあったんじゃあないでしょうか。
という深読み 笑。映画では基本的にOPで時代背景の説明をしてましたけど(アレもカッコよかった)、漫画では絵の背景やらの看板や新聞、雑誌のコピーなんかでさり気なく表してるみたいで、どうも絵と文章で巧みに世界を表しつつ、そこここにダブルイメージの散りばめられた作品のようです。
面白いじゃあないか…!!!なんだか凄そうです。
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