父 酒呑の仇討たんと
牛のむくろにてその時を待つ 鬼子鬼童丸
彼もまた敗者
妖怪絵札第5弾は鬼童丸です。マニアック!(これからはなるべく週1くらいで妖怪絵札アップしようと思います。出来る限り)
まず「鬼童丸」という名前ですが、正しくは「鬼同丸」なんです。でも本によっては「童」でもあり、僕はそっちにしました。なんでかというと、鬼童丸はかの有名な鬼、大江山の酒呑童子の息子なんですね。だから童の字を入れたかっただけ。
で、まず酒呑童子について説明しなければならないと思うんですが、彼は元人間の鬼で、子どもの頃に山に捨てられてしまい鬼になり、盗賊をしていた鬼です(元は鬼を名乗った山賊だってことだったんでしょう。それが色々脚色されたのだと思います)。
それを退治すべく、妖怪ハンターで名高い源頼光(雷光)とその四天王が山伏に変装して酒呑らの宴会に潜入し、寝所で美女に方をもませていた酒呑童子を退治したというお話です。
その酒呑がさらった女性との間の息子というのが今回の鬼童丸で、彼は牛の死体に身を隠し、父親の敵である頼光を討とうとして返り討ちにあってしまうという鬼です。
とはいえ、鬼童丸は恐らく酒呑童子伝説から派生して創作された登場人物で、実際のルーツは特にないっぽいです。
鬼や妖怪の元を辿れば、それは歴史上の敗者であったという黒い面も段々垣間見えてきたりします。事実、大和朝廷に従わなかった一族のことを、「土蜘蛛」と呼んでいたという話もありますし、一説だと「狐」や「河童」も被差別民を指していたとかいう怖い話もきいたことがあります。肉の塊妖怪「ぬっぺふほふ(ぬっぺっぽう)」なんかも、ある種の奇形児だったのではないかとも思えるし…。
また精神的な面えでは、妖怪は他の宗教に追いやられた神の零落した姿とも柳田國男は言ってます。なんでも、「一つ目小僧」は元々、ある宗教における神官が、精神的な世界を見るために片目を潰すことに由来しているとか。
手塚治虫の火の鳥太陽編はまさにその構図ですよね。恐らく手塚さんは意図的にこれをやってます。仏教神と古来の神々が戦争をする時、古来の神々は石や木から飛び出し(これはアニミズムに沿っての表現でしょう)、その姿は天狗のようだったり、牛鬼のようだったりしてますし、これに繋がる異形編ではしっかり「妖怪」になりましたからね。
正直太陽編の構図は自分も漫画でやりたいと思ってたものだったので、高校生の時に読んでショックを受けました 笑。
話が逸れましたね。ちなみに酒呑童子伝説には他にも派生があって、彼の弟子の一人である茨木童子は、羅生門の鬼として、頼光の四天王の一人渡辺綱と戦う話があります。あと、酒呑童子は八俣大蛇の生まれ変わりとも言われてます。酒運の悪い人ですね。更に酒呑童子は安徳天皇に生まれ変わった、なんて言われていますがそこはまた歴史の敗者という黒くて重い話なのでこの辺で。
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